今回は、過去30年間のデータを用いて、過去20年間のリターンとリスクについて紹介します。
ツールによる長期積立シミュレーション結果も掲載しているので、参考になる情報が盛り沢山です。
記事の前半ではオルカンとS&P500の概要を、後半では過去20年間のリターン・リスクおよび、ツールによる長期投資シミュレーション結果を紹介します。
この記事を書いた人
- 『NISAの達人』の管理人
- 会社員&ブロガー
- 新NISA(選び方、買い方、運用方法)について発信
この記事を読み終えることで、過去20年間のリターンとリスクについて理解できるだけではなく、シミュレーション結果を踏まえてどの程度の投資利益が期待できるのかを把握できるようになります。
これから資産運用を始める方
NISAなど資産運用を始めるには、証券口座の開設が必要です。
また、証券口座を開設するなら、取引コストを抑えられる松井証券がおすすめ!
この機会に、証券口座を開設しておくことをおすすめします!
オールカントリー(オルカン)って何?
オールカントリー(オルカン)とは、投資信託として知られる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のことです。
このオルカンには、次に示す3つの特徴があります。
オルカンの特徴3つ
- この投資信託1つで、全世界株式に投資できる。
- 分配金を出さないため、複利効果を最大限活用できる。
- 世界経済の移り変わりに合わせて、投資先や銘柄が自動的に切り替わる。
オルカンの詳細は、以下の記事でも解説しているので、ぜひご覧ください。
S&P500って何?
S&P500は、S&P500ダウ・ジョーンズ・インデックが算出している株価指数です。
このS&P500には、次に示す3つの特徴があります。
S&P500の特徴3つ
- 米国株式市場全体の動きを概ね反映した株価指数である。
- 米国株式市場に上場または登録されている代表的な銘柄約500種類の時価総額をもとに算出されている。
- 時価総額が大きい構成銘柄の値動きの影響を受けやすい株価指数である。
最近10年間の年率平均利回りの推移は、以下のようになっています。
期間 | 平均利回り(トータルリターン) |
---|---|
1年間 | 29.77% |
3年間 | 3.77% |
5年間 | 11.48% |
10年間 | 10.38% |
利回りの推移から、中長期的に成長していることが分かりますね。
S&P500の詳細は、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
【チャート比較】過去20年間におけるリターンとリスク
次に、MSCI ACWI vs S&P 500にて公開されている1993年~2023年の過去30年間のデータを分析してみましょう!
今回は、過去20年間のインデックスの推移とリターン・リスク(= 利回り・ボラティリティ)を確認したいと思います。
過去20年間のリターンとリスク
順に解説しますね。
株価の推移
まずは、過去30年間のデータを用いて株価の推移を確認しました。
オルカンとS&P500の株価推移は、以下に示す通りです。
比較結果から、直近10年間はS&P500の方が運用成績が良いですね。
実際に2023年12月時点の差額を調べてみると、800ドル以上の差があることが分かります。
チャートからも分かるように、S&P500は変動幅が大きいことが予想できますね。
オルカンのリターンとリスク
次に、投資期間ごとの年率平均利回りの変動幅を計算しました。
オルカンの場合において、投資期間を1年間、3年間、5年間、10年間、15年間、20年間と変化させたときの変動幅は以下のようになります。
さらに、投資開始時期をずらしながら算出した、投資期間ごとのリターン(平均値)とリスク(最大値)は、以下に示す通りです。
期間 | リターン(平均値) | リスク(最大値) |
---|---|---|
1年間 | 9.443810 | - |
3年間 | 8.124203 | 27.481407 |
5年間 | 7.676631 | 22.733477 |
10年間 | 6.893459 | 13.955850 |
15年間 | 6.436872 | 11.738980 |
20年間 | 6.899523 | 9.649744 |
今回のケースでは、10年以上投資すれば損失が発生しないことが分かりますね。
S&P500のリターンとリスク
オルカンの場合と同様に、S&P500に対して投資期間ごとの年率平均利回りの変動幅を計算しました。
S&P500の場合において、投資期間を1年間、3年間、5年間、10年間、15年間、20年間と変化させたときの変動幅は以下のようになります。
さらに、投資開始時期をずらしながら算出した、投資期間ごとのリターン(平均値)とリスク(最大値)は、以下に示す通りです。
期間 | リターン(平均値) | リスク(最大値) |
---|---|---|
1年間 | 11.793280 | - |
3年間 | 10.674090 | 39.989315 |
5年間 | 9.811408 | 33.927025 |
10年間 | 8.342137 | 18.600534 |
15年間 | 7.613166 | 15.262581 |
20年間 | 8.208769 | 10.971100 |
今回のケースでは、15年以上投資すれば損失が発生しないことが分かりますね。
以上の結果から、オルカンと比較して以下の2点が読み取れます。
今回の結果から読み取れること2つ
- リスクとリターンの違い
オルカンと比較して、S&P500はリターンが大きいが、リスクも大きい。 - 投資期間と損失発生の関係
オルカンは10年以上の投資期間が確保できれば良いが、S&P500は15年以上の投資期間を確保する必要がある。
このように、投資期間が確保できるのであれば、最終的な投資利益はS&P500の方が多くなる、と考えられますね。
過去実績に基づく推移
今回の過去データを活用し、当時、積立投資をした場合にどの程度の投資結果になるかをシミュレーションできるようにしました。
元金、毎月の投資金額、投資期間(投資開始期間と投資終了期間)を指定すると毎月の成績が折れ線グラフで出力されます。
表示されるシミュレーション結果5つ
- 投資総額
- 過去実績に基づく運用結果(S&P500
- 年率平均利回りに基づく運用結果(S&P500)
- 過去実績に基づく運用結果(オルカン)
- 年率平均利回りに基づく運用結果(オルカン)
実際に動かせるため、パラメータを変えることで、投資結果がどの様に変化するかを体験してみてください。
スマホよりも、パソコンやタブレットの方が使いやすいツールとなっています。
ツールによる長期積立シミュレーション
先程得られたリターンとリスクの推定結果を用いて、長期投資積立シミュレーションを行います。
今回は、以下の3ステップで、長期積立シミュレーション結果を紹介します。
長期積立シミュレーション結果の紹介3ステップ
さらに、今回使うツールの詳細は、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
シミュレーション条件
今回は、以下の条件で長期積立投資した場合の成績をシミュレーションしてみたいと思います。
項目 | オルカンの場合 | S&P500の場合 |
---|---|---|
毎月の積立額 | 3万円 | 3万円 |
投資期間 | 20年間 | 20年間 |
リターン | 6.899523 | 8.208769 |
リスク | 19.299488 (= 9.649744*2) | 21.9422 (= 10.971100*2) |
手数料(信託報酬) | 0.05775% | 0.09372% |
参考:リターンの分布とリスクの関係
リターンが正規分布に従うと仮定した場合、95%の確率で±2×標準偏差の範囲内に入ることが知られています。
さらに、20年間の積立後も5年間や10年間、運用を続けた場合の結果もあわせて提示します。
オルカンのシミュレーション結果
まずは、オルカンに投資した場合において、以下の3パターンのシミュレーションを示します。
シミュレーション結果3パターン(オルカン)
積立投資を20年間、続けた場合
この時のサマリーは、以下に示す通りです。
項目 | 値 |
---|---|
総投資額 | 720万円 |
運用結果の最頻値 | 約9,519万円 |
運用結果の中央値 | 約1億2,855万円 |
運用結果の期待値 | 約1億4,939万円 |
期待値が出る確率 | 39.2% |
元本割れする確率 | 14.5% |
積立投資を20年し、さらに5年間運用した場合
この時のサマリーは、以下に示す通りです。
項目 | 値 |
---|---|
総投資額 | 720万円 |
運用結果の最頻値 | 約1億413万円 |
運用結果の中央値 | 約1億6,510万円 |
運用結果の期待値 | 約2億789万円 |
期待値が出る確率 | 36.7% |
元本割れする確率 | 11.1% |
積立投資を20年し、さらに10年間運用した場合
この時のサマリーは、以下に示す通りです。
項目 | 値 |
---|---|
総投資額 | 720万円 |
運用結果の最頻値 | 約1億1,392万円 |
運用結果の中央値 | 約2億1,205万円 |
運用結果の期待値 | 約2億8,930万円 |
期待値が出る確率 | 34.7% |
元本割れする確率 | 8.5% |
運用期間を追加で10年確保したとしても、元本割れする確率が8.5%と少し高い状態です。
一方、複利効果の恩恵を受けられるため、「少額・長期・積立」という3ステップで進めることで、元本割れする確率を下げられますね。
S&P500のシミュレーション結果
次に、S&P500に投資した場合において、以下の3パターンのシミュレーションを示します。
シミュレーション結果3パターン(S&P500)
積立投資を20年間、続けた場合
この時のサマリーは、以下に示す通りです。
項目 | 値 |
---|---|
総投資額 | 720万円 |
運用結果の最頻値 | 約9,492万円 |
運用結果の中央値 | 約1億4,152万円 |
運用結果の期待値 | 約1億7,280万円 |
期待値が出る確率 | 37.6% |
元本割れする確率 | 14.2% |
積立投資を20年し、さらに5年間運用した場合
この時のサマリーは、以下に示す通りです。
項目 | 値 |
---|---|
総投資額 | 720万円 |
運用結果の最頻値 | 約1億355万円 |
運用結果の中央値 | 約1億8,891万円 |
運用結果の期待値 | 約2億5,515万円 |
期待値が出る確率 | 34.9% |
元本割れする確率 | 10.7% |
積立投資を20年し、さらに10年間運用した場合
この時のサマリーは、以下に示す通りです。
項目 | 値 |
---|---|
総投資額 | 720万円 |
運用結果の最頻値 | 約1億1,297万円 |
運用結果の中央値 | 約2億5,217万円 |
運用結果の期待値 | 約3億7,675万円 |
期待値が出る確率 | 32.7% |
元本割れする確率 | 8.1% |
今回の結果では、積立投資20年間、運用期間30年間として、S&P500に投資するのが一番元本割れする確率が低いことが分かりますね。
あくまでシミュレーション結果のため、参考情報として捉えてください。
よくある質問3つ
最後に、20年間以上の長期投資に関するよくある質問3つに回答します。
積立投資と一括投資はどちらが良い?
投資期間と投資可能金額に依存しますが、多くの場合、積立投資でコツコツ投資するのをおすすめします。
これは、以下に示す3つから得られるメリットを享受しつつ、投資を行えるためです。
積立投資を選択するメリット3つ
- ドルコスト平均法により、1株あたりの購入額が平均して安くなることが多いため。
- 暴落や暴騰によるリスクを分散できるため。
- 少額から投資を始められるため。
一方、相場がほぼ右肩上がりの場合は、上記の投資方法だと利益が減少する可能性はあります。
右肩上がりが続くのであれば、最初の時点で一括投資するのが一番良いですからね。
にむ右肩上がりの相場が続くことはほとんどないことを考えると、積立投資でコツコツ投資するのが良いと考えます。
オルカンとS&P500どちらに投資すべき?
私の個人的な考え方として、次の2パターンが挙げられます。
投資先の決め方2パターン
- リターン重視ならS&P500
- 投資先に迷ったらオルカン
これまでの傾向を踏まえると、米国経済が世界経済の中心となっています。
今後もこのような傾向が続くと考えるのであれば、S&P500に投資するのが良いでしょう。
一方、今後、米国の経済成長に陰りが見えてくると考えているのであれば、全世界に投資できるオルカンに投資することをおすすめします。
自分の投資スタイルに合わせて、投資先を決めてみてください。
にむリターンとリスクはどの程度を見込むべき?
記事の途中で解説していますが、おすすめは±2×標準偏差の分を見積もることです。
今回の例の場合、リターンとリスクの見積もり結果は以下のようになります。
対象 リターン(平均値) リスク(最大値) オルカン 6.899523 19.299488 S&P500 8.208769 21.9422 リターンとリスクの見積もり結果 100年に1度の頻度まで下げたい場合、±2.33×標準偏差とすると良いですよ!
にむ
自身の投資スタイルにあわせて計画的に投資しよう!
今回は、以下の内容について解説しました。
直近の20年間では、チャートからオルカンとS&P500のどちらにおいても、投資成績が良いことが分かりましたね。
また、長期積立シミュレーションツールを用いて、オルカンとS&P500の両方に対して、投資期間と運用期間を変更して傾向を確認しました。
その結果、S&P500を対象に投資期間20年間・運用期間30年間を確保するスタイルが、最も元本割れする確率が低いことが分かりました。
今回の結果は、将来の投資成績を保証するものではございません。
一方、元本割れする確率が8%だと100年に8回程度は元本割れするタイミングが訪れる可能性があるため、リスクアセスメントが重要になります。
どのように運用すると良いかは、ご自身のリスク許容度も踏まえてた上で、検討してみてください。
私は、長期投資による利益を狙って、オルカンとS&P500に投資しています。