この記事で解決できる悩み
今回は、シャープレシオから読み取れることや注意点を中心に解説します。
シャープレシオを活用することで、投資対象の比較検討がスムーズに行えるようになりました。
記事の前半ではシャープレシオの定義とその特徴を、後半ではシャープレシオを活用する際の注意点と具体例を具体的に解説します。
この記事を書いた人
- 『NISAの達人』の管理人
- 会社員&ブロガー
- 新NISA(選び方、買い方、運用方法)について発信
この記事を読み終えることで、シャープレシオについての理解が深まるだけではなく、シャープレシオの特徴や注意点も把握できた状態になりますよ!
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シャープレシオって何?
日本FP協会の教材で解説されている資料に基づくと、シャープレシオの定義は以下に示す通りです。
シャープレシオの定義
シャープレシオ = ポートフォリオのリターン-無リスクレート ポートフォリオの標準偏差
様々な用語が登場したので、一度整理しておきます。
シャープレシオの定義で使われている用語の意味一覧
- リターン
投資した際に得られる収益率(利回り)のことを指す。 - 無リスクレート※
無リスク利子率や安全利子率とも呼ばれ、無リスク資産(理論上、リスクがない物)から生じる利回り(金利)のことを指す。 - 標準偏差
リターンの振れ幅のことを指す。リスクとも呼ぶ。
シャープレシオから分かること3つ
先ほど紹介したシャープレシオから、何が分かるのでしょうか?
以降では、シャープレシオについてもう少し掘り下げていきたいと思います。
シャープレシオから分かること3つ
投資の効率性を評価できる
まず、シャープレシオを用いることで投資の効率性(パフォーマンス)を評価できます。
日本FP協会の教材にイメージ図が掲載されていたので、併せて紹介します。
上図から分かるように、分母が大きくかつ分子が小さいほど投資の効率性が高くなることが分かりますね。
すなわち、小さいリスクで大きなリターンが得られるほど、シャープレシオの値が大きくなることを意味します。
シャープレシオの分子部分を「超過リターン」と呼びますよ!
パフォーマンスを定量的に評価できる
シャープレシオは以下のように分類され、投資対象のパフォーマンスの定量的な評価に活用できます。
シャープレシオの分類結果3パターン
- シャープレシオが0.5未満
リスクに対するリターンが十分ではないため、パフォーマンスが悪い。 - シャープレシオが0.5以上1未満
リスクに対するリターンは悪くないが、改善の余地がある。 - シャープレシオが1以上
リスクに対するリターンが十分であり、パフォーマンスが良い。
上記の関係は、平均値(リターン)と標準偏差(リスク)をパラメータに持つ正規分布を考えると理解しやすいです。
今回は、以下の3パターンに対して、実際に正規分布のグラフを描画して解説します。
パターン | 平均値(リターン) | 標準偏差(リスク) | シャープレシオ |
---|---|---|---|
シャープレシオが0.5未満 | 1.5 | 3.75 | 0.40 |
シャープレシオが0.5以上1未満 | 1.5 | 2.00 | 0.75 |
シャープレシオが1以上 | 1.5 | 1.25 | 1.20 |
分かりやすくするため、今回は平均値(リターン)を1.5に揃えました。
この時の正規分布の概形は、以下のようになります。
この結果から、高い確率でリターンがマイナスになる可能性があることが分かりますね。
左側の破線がグレーの縦軸から離れている点に着目し、上記のように判断しました。
この時の正規分布の概形は、以下のようになります。
先程の結果と比較すると、左側の破線がグレーの縦軸に近づいており、パフォーマンスが上がっていることが分かりますね。
この時の正規分布の概形は、以下のようになります。
左側の破線がグレーの縦軸よりも右側にあるため、パフォーマンスが良いことが分かりますね。
両側の破線の間に入る確率は約68%となりますよ!
同じ投資対象のファンドを比較評価できる
シャープレシオは、同じアセットクラス(株式、債券、不動産など)の投資対象商品を比較評価する際にも活用できます。
何故なら、シャープレシオが投資対象のパフォーマンスを表す指標だからです。
具体事例は以降の章で説明するとして、ここでは、評価結果の例を以下の2パターンに分けて紹介します。
シャープレシオによる評価2パターン
簡単のため、無リスクレートは0としました。
リターンが同じで、シャープレシオが異なる場合
このケースでは、以下に示すように、シャープレシオが大きいほどバラツキが小さくなります。
シャープレシオが同じで、リターンが異なる場合
このケースでは、以下に示すように、リターンが高い方が値動きが激しくなります。
上記の結果から分かるように、シャープレシオを評価する際は、リターンとリスクをセットで考えることが重要です。
シャープレシオ活用時の注意点4つ
シャープレシオについて一通り解説したので、以降ではシャープレシオ活用時の注意点について解説します。
シャープレシオ活用時の注意点4つ
順に解説しますね。
評価期間を揃える
シャープレシオを用いてパフォーマンスを比較する際は、評価期間を揃える必要があります。
なぜなら、シャープレシオを求める際に用いるリターンとリスクは、推定時期や推定対象の期間に応じて予測結果が異なるためです。
理解を深めるため、下記の記事で作成したツールで推定したリターンとリスクを推定してみましょう。
今回は、1, 3, 6, 12, 36, 120, 360ヶ月間におけるリターンとリスクを推定しました。
推定結果は、以下に示す通りです。
上記の結果から、リターンとリスクを推定する際の期間の違いによって、推定値が異なることが分かると思います。
このため、これらの値を用いて導出されるシャープレシオで評価する際も、評価期間を揃えることが重要になります。
評価対象のアセットクラスを揃える
シャープレシオで評価する際は、同じアセットクラス(株式、不動産、債券、現預金など)に揃えた上で比較する必要があります。
なぜなら、アセットクラスによってリターンとリスクの傾向が異なるためです。
一般的に、現預金、債券、株式のリターンとリスクの関係は、以下のようになります。
上記の結果から、株式は比較的リスクが高い一方、債券はあまりリスクが高くありません。
このため、債券のシャープレシオの方が大きな値になる可能性があります。
株式同士、債券同士というように、アセットクラスを揃えた上で比較しましょう。
同じ通貨に換算して比較する
シャープレシオを用いて比較する際は、同じ通貨に換算して比較するようにしましょう。
なぜなら、為替変動リスクや無リスクレートが通貨ごとに異なるためです。
例えば、2024/12/24時点での日本と米国のそれぞれにおける無リスクレートは、以下のようになります。
対象 | 評価対象 | 無リスクレート |
---|---|---|
日本 | 無担保コールO/N物レート(TONA) | 0.227% |
米国 | Secured Overnight Financing Rate(SOFR) | 4.560% |
今回、日本と米国の無リスクレートの説明は、以下を参照しました。
日本の無リスクレートの解説
銀行が資金を調達する際の銀行の信用リスク等をほとんど反映しない金利をいう。日本円のリスク・フリー・レートとしては、無担保コールオーバーナイト(O/N)物レート(TONA)が特定されている。
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/special/libor/pdf/tona_rate_glossary.pdf
米国の無リスクレートの解説
LIBORの不正操作問題以降、LIBORに代わるリスク・フリー・レート(Risk Free Rate, RFR)が模索されてきましたが、米国で使用されるRFRの特徴は、日本とは異なり、レポ市場に立脚した金利である点です。SOFRはSecured Overnight Financing Rateの頭文字をとったものですが、Securedは有担保を意味しており、担保付のオーバーナイト金利を意味します。
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202203/202003g.html
このように、対象通貨により計算結果が異なるため、同一通貨に換算して比較することが重要です。
商品の特性や将来予想は判断できない
シャープレシオは、金融商品の特性や将来予想の判断には利用できません。
すでに説明したように、シャープレシオは投資時のパフォーマンスを評価するものであるためです。
例えば、以下のケースではシャープレシオが同じ値になりますが、金融商品の特性までは判断できません。
リターン | リスク | シャープレシオ | 金融商品の特性 |
---|---|---|---|
2% | 2% | 1 | ローリスク・ローリターン |
10% | 10% | 1 | ハイリスク・ハイリターン |
シャープレシオを用いて評価する際は、上記のことに注意しましょう。
S&P500のシャープレシオの比較例2つ
ここまでで、シャープレシオについて理解が深まったと思います。
以降では、S&P500に関する金融商品を対象に、シャープレシオの比較例を紹介したいと思います。
S&P500のシャープレシオの比較例2つ
S&P500の為替ヘッジ有無による比較
まず、S&P500の為替ヘッジ有無の違いが、シャープレシオにどの程度影響するかを調べてみました。
MAXISシリーズを対象に評価した結果は、以下に示す通りです。
期間 | MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 | MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(為替ヘッジあり) |
---|---|---|
1年 | 1.98 | 1.92 |
3年 | 1.21 | 0.38 |
設定来 | 1.25 | 0.69 |
上記の結果から、為替ヘッジなしの方がパフォーマンスが良いことが分かりますね。
S&P500とNASDAQ100の比較
続いて、S&P500とNASDAQ100を対象に、シャープレシオを比較してみました。
先程と同様に、MAXISシリーズを対象に評価した結果は、以下に示す通りです。
期間 | MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 | MAXISナスダック100上場投信 |
---|---|---|
1年 | 1.98 | 1.48 |
3年 | 1.21 | 0.90 |
設定来 | 1.25 | 1.19 |
上記の結果から、こちらの場合もS&P500(為替ヘッジなし)の方がパフォーマンスが良いことが分かりますね。
シャープレシオに関するよくある質問3つ
最後に、シャープレシオに関するよくある質問を紹介します。
シャープレシオが高い方が良いのは何故?
一般に、投資の世界では小さいリスクで大きなリターンを得られた場合、投資のパフォーマンスが良いと判断します。
これは、下記に示す簡単な例から明らかですね。
例 リターン リスク シャープレシオ 100万円投資した場合、68%の確率で90万円~130万円になります。
95%の確率で70万円~150万円になります。10% 20% 0.5 100万円投資した場合、68%の確率で100万円~120万円になります。
95%の確率で90万円~130万円になります。10% 10% 1.0 投資のパフォーマンスの善し悪しの例 さらに、シャープレシオの計算式から、リスクが小さい(= 分母の値が小さい)かつリターンが大きい(= 分母の値が大きい)ほどシャープレシオの値は大きくなります。
よって、シャープレシオが高いことは、小さいリスクで大きなリターンを得られたことを意味するのが分かると思います。
シャープレシオの目安ってどの位?
以下に示す通り、シャープレシオの目安は1となります。
シャープレシオの分類結果3パターン
- シャープレシオが0.5未満
リスクに対するリターンが十分ではないため、パフォーマンスが悪い。 - シャープレシオが0.5以上1未満
リスクに対するリターンは悪くないが、改善の余地がある。 - シャープレシオが1以上
リスクに対するリターンが十分であり、パフォーマンスが良い。
シャープレシオが2以上の場合、極めてパフォーマンスが良いと言えますよ!
にむ- シャープレシオが0.5未満
シャープレシオ以外に注目する指標はある?
シャープレシオの計算に用いるリターンやリスクの実測値にも着目することをおススメします。
何故なら、シャープレシオだけでは、ローリスク・ローリターンまたはハイリスク・ハイリターンなど、金融商品の特性までは判断できないためです。
具体例としては、以下が当てはまります。
リターン リスク シャープレシオ 金融商品の特性 3% 3% 1 ローリスク・ローリターン 12% 12% 1 ハイリスク・ハイリターン シャープレシオが同じ値になるケース 上記のような金融商品の特性を判断するため、リターンやリスクの実測値も確認しておきましょう!
様々な評価指標を参考に投資先を決定しよう!
今回は、以下の内容について解説しました。
ご自身の資産を守りつつ資産運用を行っていくためにも、できるだけリスクを抑えつつリターンを得られるようにしたいですよね。
リスクを完全に0にはできませんが、今回紹介したシャープレシオも参考にして、投資対象の比較検討を行ってみてください。
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